つっこみで愛と勇気とお笑いを!

 ようやく開幕Jリーグ。我らがアビスパは残念ながらJ2スタートで4日が開幕。相手はサガン鳥栖九州ダービーでした。さすが開幕戦だけあってNHKで放送があり、テレビの前に始まる前から鎮座して見てました。開幕前に伝えられる情報では、相変わらずの得点力不足で補強にもどうやらうまくいっていなかったみたいで、もはや「負けなければ…」という思いのみだったのですが、蓋を開けてみれば激勝。5対0の一方的な試合になりました。得点が入るたびに1人盛り上がり続けた90分。嬉しいのは間違いないのですが、試合終了のホイッスルを聞きながら、圧勝したアビスパの攻撃力を前にして、「なんでやねん!」とつっこんでしまいました。

 何につっこんだかと言えば、得点力不足を声高に叫んで来たマスコミであり、また開幕前までの練習試合で一度も無得点に抑えてこなかったくせに、開幕戦できっちり1点も与えなかったアビスパそのものへのつっこみでもあったのです。いや、彼らが「ぼけ」ていたわけではないのはわかってるんですが、おいおい、と嬉しい「つっこみ」を、笑いながらしなければならなかったわけです。

 なんでも「つっこみ」というのは、「世の中を「正しく」ではなく「おもしろく」」するのだそうです。…と、そんなことをいうのは、パオロ・マッツァリーノさんの『つっこみ力』(ちくま書房新書)。

「場を盛り上げようというサービス精神と、自己犠牲の精神が息づいている」(p.63)というこの「つっこみ力」は、相手を攻め、自分は無傷でいようとする批判や批評に一線を画しており重要な力だといいます。また「正しさ」をめぐる議論や批判なんて無意味なものはやめちゃえばいいといいます。

 ただし、社会問題は正解がわからないからといって、どうせ何やってもムダさ、みたいな虚無的、シニカルな気分に逃げ込んでしまうのは、最悪な態度です。それは勇気のない人です。
 正解がないからこそ、世の中は面白いんです。世の中を正しくするのでなく、面白くしよう、と考えるべきなのです。(p.66)

 人々というのは、「面白い」と正しさを感じたときに反応してくれるのであり、正しさにこだわっちゃうと、論理力もメディアリテラシーも常に敗れてしまう運命にあるのだと彼は言うのです。

 この本の帯には吉田戦車の挿絵とともに「愛と勇気とお笑いと。」と書かれています。北朝鮮問題にしても、政治家の事務所経費問題にしても、子どもたちのイジメや自殺にしても、なんだかみんなで「正しさ」を追求してしまう余り、行き詰まり感が生まれ、また「国全体で一致団結して!」といった風潮が生まれてくるのかもしれません。安倍総理大臣以下、閣僚はもちろん、政治家や学校の先生などの生真面目さによる窒息感は確かに感じますね。

 しかし、この『つっこみ力』にある通り、世界中を見まわしてみても、日本ほどお笑いの「ぼけ」に対して、断然と「つっこむ」笑い文化を持つところはありません。タカアンドトシの「欧米か!」に負けないくらい、社会のありとあらゆることに愛と勇気を持って「つっこんで」行きましょう。

 確かにアビスパは目に見える効果的な補強はできなかったし、開幕前の練習試合はひどい有様だったわけですが、それでも5対0で買っちゃう彼らは自分たち自身で、「つっこみ」を入れていたんでしょうかねぇ。だったら最高のエンターテイメントをリティ以下、選手たちは見せてくれていたんでしょうねぇ。ええ。