国家的陰謀を巡る混淆〜佐藤優『自壊する帝国』

 久しぶりの更新。イベントや仕事関係でちょっとドタバタしている最中。今日は2週間前に続いて日田帰り。家に帰ったらもっぱら最近は音楽やラジオを聞きながら本を読んでるか、DVDを見ている。テレビを見る割合がかなり減少中。DVDは相変わらず『24 - TWENTY FOUR』。そろそろシーズン2がようやく終わるところ。そのため相変わらず頭のなかは国家的陰謀が蠢くわけだけど(笑)、そんなところにこんな報道が。来月早々にタイにスタディツアーを予定している某団体は大丈夫なんだろうか?まぁ、これから判断すればいいのだからまだどうにでもなる。ただタイの人々を含めて、一般市民に悪影響が出なければいいけれど。

タイ:クーデター、軍「首都制圧」 首相は非常事態宣言

MSN毎日インタラクティブ

バンコク浦松丈二】国連総会出席のためニューヨークに滞在しているタイのタクシン首相はタイ時間の19日午後10時(日本時間20日午前0時)すぎから、タイ国内のテレビを通じ、非常事態宣言を発表した。しかし、首相に反対する部隊は首相府やテレビ局を占拠し、バンコク市内の制圧を発表した。タクシン首相は、国軍トップのソンティ最高司令官を解任し、前最高司令官のルアンロー国防次官に治安維持権限を委託した。タイ国軍は公式の発表をしていないが、同日夜からバンコク各地に軍が出動し、厳戒態勢を敷いている。

 国家的陰謀といえば、台風の通り過ぎるなか読んでいないことを思い出して手にした本をようやく読了。


自壊する帝国 台風渦巻く混淆のなかで『24』的なアメリカ製享楽的国家的陰謀フィクションに針を振っている僕を同じように混ぜ繰り返してやろうと頭の片隅で工作している奴がいるのだろう。新潮ドキュメント賞を受賞した佐藤優氏の『自壊する帝国』だ。「インテリジェンス・ノンフィクション」という分野は、ある種のハードボイルド小説の亜種、類のものとばかり思って敬遠していたけれど、それがなかなか面白い。もともと旧ソ連・ロシアという地域にほとんど強い関心もなく(いや、学部時代、また院で教えを請うているのはソ連・ロシアの専門家なのですが…すみません)、ちょっとだけタイトルに惹かれた購入したのだけど、予想を裏切る面白さ。旧ソ連やロシアのことを知らなくても、読み物として十分楽しめるもので、ソ連崩壊時の「人」に焦点を当てた歴史の動きに『24』とはまた別のドキドキ感で読み終えた。なるほど、歴史を国家や政府ではなく「人」から語るとやはり面白い。是非読んで欲しい。そして日本ってのは改めて恵まれ過ぎのバカな国だな、とも思うだろう。小泉とか安倍とかにこんなに騒いでどうするんだろうね、ほんと。あ、ひとつだけグッと来たところを引用。

「あのなかに(注)、『強いものに対してお願いをしてはいけない』という行があるだろう。僕は今弱い立場にいる。エリツィンは強い立場だ。だから自分のことに関しては、僕の方からは絶対にお願いしない。もっとも他人のことに関してはいろいろとお願いをしているけどね。」(p.387)

*注:ミハイル・ブルガーコフ巨匠とマルガリータ (上)