幸福という尺度〜クラーク『幼年期の終わり』
そろそろ福岡に帰らないとなぁという状態だけど、この1週間はかなりゆるりと過ごしてます。お陰様で(笑)。たくさん本を持って帰ったのにもかかわらず、また本屋に行って購入したりして結局福岡持ち帰るんだよなぁと今更ながら思うわけだけど、まぁ仕方ない。
ずいぶん前から気になりつつも読んでなかった、アーサー・C・クラークの光文社古典新訳文庫版の『幼年期の終わり』を読了。
- 作者: クラーク,池田真紀子
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/11/08
- メディア: 文庫
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さて、光文社版の本書のあらすじ。
地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的はなにか? 異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。(光文社新訳文庫ウェブサイトより)
すでにWikipediaでも紹介されているし(こちら)、とりあえずもう少し知りたい人はそちらを見てもらえばいいのだけど、SF初心者としても、かなり楽しめた…というか、読み始めたら止まらなかった感じだ。初版は米ソ冷戦状態を踏まえた上で70年ごろを想定して書かれたものだったようだけど、36年後に書き直された本書の90年バージョンは冷戦の終焉を踏まえた21世紀初頭という時代設定が改めて実際性を醸し出して、より興味深く読めたのかもしれない。
異星人によって「平和で理想的な社会」を得た人類が、その後さらに進むメタモルフォーゼで自らをどのように位置づけ、またそれを受け入れていくのか?というラストの流れは、なぜだか泣きそうになりなってしまった。別にうれしかったわけではないし、かといって悲しかったわけでもない。あのような選択をした…せざるを得なかった最後の人類(ホモサピエンス)。物質的な進化から精神のメタモルフォーゼへ。それは科学技術の進歩が決して生み出さないある種の人間の「幸福」なのかもしれないけれど、この小説が物語としてハッピーなエンドなのかそうではないのか?についてはやはり揺れ動きつつ考えてしまう。そういえば、最近ブータンの国民総幸福だとか、「幸福」を指数として物質的な視点ではなく、精神的な視点で生活を見直そうという動きが環境系の運動に代表されてあるけれど、別段新しいものではなくて、人間は常にその間をレベルの大小はあれども行き来してるんだなぁと改めて思う(ヒッピーとかもそうだしね)。
SF小説としての準古典な本書ではあるけれど、SF読まない人にも是非進めたい一冊。
さぁ、福岡に帰ったらエヴァ見るかな。また少し見方が変わるかしらん?カレラン?
- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2008/04/25
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