なめらか濃厚な奴「京都ジョニー」

風に吹かれて豆腐屋ジョニー―実録男前豆腐店ストーリー 先日大阪に出張した帰り、大阪駅の本屋さんで購入した『風に吹かれて豆腐屋ジョニー―実録男前豆腐店ストーリー』。ここ1〜2年話題の豆腐屋さん「男前豆腐店」の伊藤信吾社長の著作だ。1年弱くらい前に相棒がmixiか何かで見つけた男前豆腐店のウェブサイトを見たときに、面白いなぁと早速壁紙に使っていたこともあったけれど、いつも行くスーパーにはおいておらず、どちらかといえば、豆腐そのものより、この企業のあり方に興味を持ってた。本が出たことは知っていたけれど、最近ちゃんと本屋さんにいってなくて、たまたま大阪駅で購入したわけで。

 伊藤社長の話をまとめた感じのこの本を読んでいると、ホントにガキンチョが会社をやっているようなやんちゃさに溢れていてこれは逆に衝撃的だ。「豆腐屋なんてならない」と父親の経営する会社に背を向けた学生時代、しかしいつの間にか「もの作り」に目覚める。ただ、大量生産安売りな豆腐屋とも、また1日限定○○食なんていう玄人な豆腐屋とも一線を画し、「プロな豆腐をそれなりな値段で、けれど多くの人に食べてもらえる豆腐」を目指す姿勢がおそらく多くの人に共感してもらえているのだろう。

 本のタイトル「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」はまさに商品名。他にも「喧嘩上等やっこ野郎」「ジョニーブラウン」「厚揚げ番長」などなど、豆腐にはありえない商品名が並ぶ。またデパートで「ふんどし祭り」なる催事を開催したりする。CDを出したり、Tシャツなどグッズを販売したり、商品名に現れているキャラクター作りにこだわる。この企業がこだわるのは「商品の裏にある世界」だ。それを細かにけれど面白可笑しく作り上げ、それを消費者と共有する。もちろん、際物豆腐ではなく、こだわりの製法で300円という金額に見合った商品を提供することも忘れない。安かろう良かろうな消費社会へ一石を投じ続けている。伊藤社長は書く。

 こういうビジネス展開に批判はありますよ。「豆腐屋のくせに、何で変なことをやってんだ」なんて。でも、僕は男前豆腐店の世界観を作り上げていくことが、何より大切だと考えてる。いまや100円ショップに行けば、なんでも100円で買える。中国で大量生産した安いのが。それと競争していくには、ものの背景に世界観がなきゃいけないと思うんです。それがなきゃ、ものは売れない時代だと思う。爪切りひとつにしたって、どこそこの職人さんが、原料にこうこだわって、こういう部分を工夫して作ってるんだ、というストーリーがなきゃダメ。誰でも作ってるようなもんなら、安い方を選びますからね。(p.180)

 手作りのひとつしかない世界も悪くないけれど、誰でも欲しい!と思った時に良いものを手にとることができるだけの責任を企業が持つこともまた必要だ。消費者の側から「これだけしかない」という「オンリー1」ではなく、誰でも手に取れる「わたしだけの」ホンモノの「オンリー1」を提供することの夢や勇気を、消費者ではなく生産者にこの企業は与えているんだな、と思う。

で、上の写真。たまたま近所のダイエーで上の写真にある「京都ジョニー」を発見。なんだ、こんなところにあったのか。早速購入して昨日の夕食に。豆腐とはまた別格の濃厚な豆世界。ジョニー、濃いよ、お前。