信じてあげること〜BS1「アフリカ支援は甘くない」第4回(最終回)

 いよいよ最終回を迎えたBS世界のドキュメンタリー『アフリカ支援は甘くない』の第4回。いつも通り、今回の内容についてザッと紹介します。

『アフリカ支援は甘くない〜起業家8人の挑戦』第4回「村に残されたもの」
 イギリスの起業家8人がウガンダの村に3週間滞在し、村おこしのプロジェクトに挑んだ模様を送る4回目。最終日を迎えたが、ゲストハウスの工事が終わらないなど未完成のプロジェクトが残された。3カ月後、起業家たちはプロジェクトのその後を視察しに村を訪れる。ゲストハウスは未完成だったが、帰国後に起業家たちがインターネットなどで盛んに観光ツアーのPRを行ったかいがあり、最初の観光客が訪れることになっていた。ジャガイモ会社のメンバーも400人に増え、起業家たちの取り組みは村に活気と経済的利益をもたらしていた。しかし、医療センターは村が電気代を払わなかったために電気が止められており、短期間の取り組みで改善できる問題ではないという一面も浮き彫りになった。だが起業家たちは、プロジェクトはほかの地域でも可能だと意気込みを見せる。
原題: The Millionaires’ Mission 制作: channel4(イギリス) 2007年

 滞在期間が残り僅かになった数日と帰国し3ヶ月後に再び現地を訪れた様子についてが今回の放送。今回からの新しいプロジェクトとしては、2件あり、ひとつはシャヒードが支援を行ってきた医療センターに本来あるはずの救急車を巡るものであり、もうひとつはこれまで影が薄かったペピータとイボンヌの行った女性たちの自立支援活動です(これらは上に触れられていませんね)。

 シャヒード・アジムが新たに行った救急車支援は、突然連絡があって生まれたプロジェクトでした(プロジェクトとは多少言い過ぎですが)。帝王切開が必要な妊婦を早急に街の病院に運ぶ必要がありながらも救急車(として利用していた車)は3年前から整備もされずに使えなくなっており、別の車を調達することもできずに困っているという一本の電話から始まりました。結局、シャヒードらが使っていた車を利用し無事街に運び終え、子どもを出産することができたのですが、帝王切開といった手術を病院で行えないどころか、救急患者を搬送する手段もない現状にショックを受けたシャヒードが急遽行った支援でした。新たに車を調達し、その管理運営を村の行政にゆだねるという方法をとります。

 一方、ペピータ・ディアマンドとイボンヌ・トンプソンが新たに見いだしたビジネスチャンスが、村の女性たちが普段作っていた編んだカゴを商品として作成し、街に出て売ることができないか?というプロジェクトでした。村の女性たちとともに街に出て、最近の流行りのカゴについて調査をし、実際にどのような商品であれば売ることができるかを探ります。そして一度村に戻り試作品を作成し、業者に買い取ってもらうことができるかどうか?という働きかけを行います。まさにやってきている起業家たちが得意とする分野です。結果、村の女性たちにとっては普段の収入の数十倍という額でいくつかの商品の注文を受けることができ、早速村に帰って作っていくことを約束します。

 結局、セブ・ビショップによるジャガイモのプロジェクトとスティーブ・モーガンがこだわった水供給プロジェクト(雨水利用)以外は、最終的な完成を見ることもできず、予定の滞在時間を迎え、彼らは再びウガンダの村に帰ってくることを約束し、英国に帰ることになります。

 そして3ヶ月後帰ってきたメンバー(どうもやはりスティーブは来ていないようでしたが)は、その後のプロジェクトの経緯を見て一喜一憂します。上の四角の中に書いてあるとおり、ジャガイモの貯蔵庫プロジェクト(上の番組内容紹介では『会社』となっていますが、正確には協同組合という形で運営しています)は組合員も増え、きちんと村で運営がされていました。

 しかし、シャヒードの行った医療施設への電気供給は結局料金を払うことができず止められるという結果になり、また救急車(となる車)は購入を予定していた車とはまったく違う車が村にやってきていることを知ります(シャヒード曰く、「ぼろ車を買い換えたらまたぼろ車になった」)。この結果を受けて、彼はこう言います。「かすかな希望を与えて、またそれを僕らは奪っただけだ」と。前回の言葉同様、シャヒードはプロジェクトの進め方には大いに問題がある形で行いますが、心理的には国際協力という枠ぐみにおいて物事を考える素地があるように思います。これにたいして、NGOワールドビジョンのスタッフであるクワランバは、シャヒードのプロジェクトはウガンダという国や地域の制度に関わっているために容易に進ものではないものだったと話します。村の人たちと一定期間一緒に生活をし、働くことでしか見えず、また帰ることができないものがあると言うことを知らなければならないのだと話します。番組の最後で、電気は結局役所が電気代を払うことになり、現在は利用できるようになったことが報告されました。

 またペピータとイボンヌのカゴ製作のプロジェクトは結局3ヶ月後も何も進まないままでした。業者から注文を受けた製品を3ヶ月経っても納入できず、女性たちは相変わらず注文を受けたカゴを作り続けていました。イボンヌはこれを知り、「今より豊かになりたいなら、どうして何をもさしおいてそれを使用としないのだろうか?」と憤懣やるかたない様子を見せます。しかし、クワランバはこれに関して彼女らに次のように説明します。村の女性たちは家族を養う仕事をたくさん抱えているのであり、他にもしなければならないことはたくさんある。彼女たちがカゴを作ることで莫大な収入を得ることが分かり、考えは変わったとしても生活のペースを変えることはできないのだ、と。こちらも番組の最後で結局カゴ作りは続かず、立ち消えになったことが報告されます。

 これら二つの失敗したプロジェクトの原因ははっきりしています。もともとプロジェクト自体が生み出されたのは滞在期間の最終日を間近にした時点でした。起業家たちがようやくやるべきと考えたプロジェクトにたいして、村の住民たちに十分にその内容やその意義を伝え、共に考えるだけの時間がなかったというのが一番の原因でしょう。また女性たちに見られるように(そして村人たちは一様にしてそうですが)、現実の生活のなかでプロジェクトを何にもまして優先しなければならないという意識を生み出すことができなかったのです。また同時に起業家たちの関わり自体も他の成功した事業に比べて十分な時間をかけることができなかったのです。

 そして最大のプロジェクトであり、クワランバらワールドビジョンから高い評価を受けていた宿泊施設事業ですが、結局上記の通りこれが完成する前に現地を離れなければならなかった起業家たちですが、彼らが現地に帰ったとき、ほぼ完成の状態に近づいていました。起業家ら自身も自分たちが英国に帰ったあとも宿泊施設に観光客を導くための手を次々と打っていきます。そして3ヶ月後には初めての宿泊者がやってくるというところまでこぎ着けました。もちろん彼らが再訪したときに「完璧」だったわけではありません。このプロジェクトを担当したセブ・ビショップやディアドレ・バウンズ、トニー・キャラハンらは自ら現地の人たち共に最後の仕上げの作業を客がやってくる直前までまさに汗水流して行っていきます。こうした彼らの姿勢が成功に導くひとつの答えだったのだろうと思います。

 「ティーチ・イン・ウガンダ(Teach Inn Uganda)」と名付けられたこの宿泊施設は当面彼ら起業家らが中心になって責任を持ち運営を行っていきながら、最終的には村が運営できるように譲渡するという形をとったようです。セブらが作った宿泊施設のウェブサイトが下記です。

 ウェブサイトを眺めていると、ディアドレ・バウンズの旅行会社である「i-to-i」やセブ・ビショップのメディア会社「Steak Media」「miva」がパートナー団体として関わっていることが分かります。云うまでもなく3週間で村の人たちの生活が大きく変わることはありません。彼らが自らが現地から離れたあとでさえ、自分たちが関わった責任をきちんととることを考え、実行しているという意味では非常に大きなものであったでしょう。

 もちろん、彼らはNGOスタッフであるわけではなく、起業家として村の人たちと協力しながら新しいビジネスモデルを作ることを目的として行いました。成功したものも失敗したものもあります。また上記のティーチ・イン・ウガンダのように、観光客の斡旋などを英国の企業が行い、現地に観光客を送り込むという形をとっていることで、彼ら自身にしても新しいビジネスを生み出すことにもなりました。これまでこうした途上国のビジネスはなかなかWin-Winな結果になることが難しかった。だからこそ南北問題という言葉に典型的に大きな格差が先進国との間に生まれてきたのであり、村人たちの生活が向上しない原因にもなりました。おそらく現地で自らプロジェクトを立案し、村の人たちと協力して作り上げたこのビジネスはWin-Winモデルになる要素を大きく残しています。

 NGOが解決できない問題を起業家ならできることもあるかもしれないという思いからスタートしたこの企画は、云うまでもなく最終的に村に根付かなければ成功とはいえません。しかし一方で、シャヒードやトニーが英国に戻ったあと自らの生活を顧み、お金の使い方を考えるようになったと発言しているとおり、起業から自身の思いや考えも少しずつ変化を与えられました。シャヒードが云った「貧しい人たちがどう生活しているか?なんて考えたこともありませんでした」という正直な言葉から彼らが懸命に取り組んできた3週間をブラウン管を通してみて考えることができたなぁと改めて思います。おそらく4日連続で夜中に大量の文章がアップされているのを見て「そう思ってたよ」と皆さん思うでしょうが。わはは。あ、ちなみにブラウン管というのはたとえではなく、まだウチはブラウン管なんですよ!!いいでしょう?(笑)何にせよ、いろいろと考えながらも非常に面白い番組でした(いろんな意味で!)

 最後にワールドビジョンUKのスタッフであるクワランバが話した文章を紹介しますね。

大切なのは村の人たちを信じてあげることです。

 これからも皆さんとよい国際協力をできますよう。