人は知り、体験して成長する:『モーター・サイクル・ダイアリーズ』

モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版 あまりの忙しさに自暴自棄になって「もういいや」と相棒と借りてきた映画『モーターサイクル・ダイアリーズ 通常版』を見た。「革命家」なんてギャグで使うことすらほとんどなくなってきたなかで(まぁ僕の周辺ではよく使うけど−笑)、どうしても気になるのがチェ・ゲバラ。映画見たいなぁと思っていたものの、いつも通りのタイミングの悪さと腰の重さで見ることもなく、ようやくビデオ鑑賞。

 ゲバラと友人グラナードの2人の医学生がポンコツバイク(でもかっちょいいんだよな)にまたがって、アルゼンチンからチリ、ペルー、ベネズエラへと旅を続ける青春ロードムービー。革命家としてのゲバラの萌芽期を描く…とは言っても、基本は若き男2人の旅行記であって、若い綺麗な女性に恋心を持ったり、人妻に色目を使って旦那とその仲間たちに追いかけられたり、嘘ついてポンコツバイクを直してもらったり…という、サザエさんのカツオくん的世界が「ゲバラは何を若いときに考えていたんだろう」と身構えていた自分をすかされて、逆に「青春ロードムービー」としてのこの作品を楽しむことに。友人グラナードの回顧録である『トラベリング・ウィズ・ゲバラ』を元に作られたこの映画は、ゲバラをある種の神話的世界から描くのではなく(とはいえ、「奴はすごい」的なところもあるけれど)、同じ目線の一人の若者として、生き生きとした姿を見せてる。

 とはいえ、「革命家」たるゲバラが立ち上がろうとする姿も所々に描かれる。ペルーの砂漠で出会った夫婦、ハンセン病棟で見た現実、そしてマチュピチュで「気づく」ゲバラ。誰の立場に立って世界・世の中を見るか?ということに徐々に気がつき、そしてゲバラの世界観が浮かび上がっていく様は、まさしくカツオくん的世界から、良質の成長物語へと変貌を見せる。見ている自分自身がいろんな意味で元気づけられるものでもあったのです。