先週の授業の報告(6/10-13)

 少し遅くなりましたが、先週の授業の内容についてお伝えします。わからないところなどがあれば、いつでも相談してください。

6月10日(火)
1限 国際協力論I(7回目)…理論と歴史についての3回目。今回は1970年代から80年代にかけての動きとそれに伴う理論的な話をしました。トリックル・ダウンに基づく経済成長に主眼を置いた国際協力・開発のあり方の反省を受けて登場したヒューマン・ベーシック・ニーズ(BHN)戦略とは、文字通り貧困層の生活に密着した、人間が生きていくために必要とされるものを提供することに主眼を置いた直接的な支援でした。社会開発と呼ばれるもののスタート地点でもあります。しかし、石油危機や国際経済システムの変容に伴い、国際協力・開発のあり方にも大きな影響を与えられます。それは債務危機という援助によって生み出された途上国のシステム変化を受けての構造調整政策の登場によるものであり、このあたりを中心にお話ししました。

2限 基礎演習[2年ゼミ](7回目)…今回もテキストの輪読。今回は募金や寄付・チャリティなどの根源のひとつでもある「善意」というものについてと、「豊かさと貧しさ」をテーマにしたものでした。皆さんもこれまでに募金やモノの寄付などを行ったこともあると思いますが、それがどのように現地で用いられ、また現地に影響を与えているかを考えたことはないかもしれません。「きっと役に立っているだろう」「誰かを助けただろう」という肯定的な思いが現実である一方で、予想もできない「不幸」を生み出している可能性を考えてみたことはあるでしょうか。今回はそうした「善意」が生み出す「歪み」をテーマにしてディスカッションをしました。また豊かさと貧しさという一見分かりやすいような比較が、実は非常に難しく、恣意的に作り出されるものであるかもしれないことを学びました。

4限 国際社会論[非常勤](7回目)…NGOの活動の種類について話をしました。NGOの活動というのはマスコミなどを通して良く目にする自然または人為的な災害を前に被害者・被災者に対する直接的な支援活動というのが一番イメージしやすい部分であるかもしれませんが、もちろんそれだけではなく、現地でその後も継続的に人々と関わりより良い生活を送るためにともに活動するものもあれば、自国内で政府や国際機関などに働きかける活動や市民に現状を知ってもらうための活動など様々あります。これらについて1980年代後半にイギリスのNGOを中心として語られていた話を題材として説明を行いました。


6月12日(木)
3限 NGO論I(8回目)…前回まではNGOの起源及び欧米で活動するNGOについて具体的な活動を踏まえた説明を行いましたが、今回は引き続いてアジアで活動するローカルNGOについて説明をしました。農村開発や女性の地位向上のために活動するNGOや金融NGO、また教育や子ども支援を行うNGOについてお話ししました。欧米ともまた日本とも違った形でNGOが生まれ、また活動しているアジアなど途上国でのNGOの活動の位置づけやその具体的な内容について少しは知ってもらえただろうと思います。次回は途上国のローカルNGOについて映像を見てもらった後、レポートを書いてもらう予定にしています。授業中に説明したとおりですが、一応近日中に概要を研究室のウェブサイトに掲載します。

5限 卒業研究[4年ゼミ](8回目)…今回から3回ほど卒業研究に向けて各自がこの時間を資料探しや文献の読み込みなどの作業を行う時間にしています。就職活動や進学の準備などのために、なかなか卒業研究論文のための準備ができないと思いますが、この時間をうまく使って少しずつ準備を進めていきましょう。

7限 国際協力論II(8回目)…国際協力に関わるアクターについての最終回でした。地方自治体に焦点を当て、それらがどのような役割を担っているか?また担ってきたか?についてお話しし、具体的に北九州市が行う国際協力に関する説明を行いました。次回は、時間の最初からレポートを作成してもらう予定にしています。内容は授業中にお話ししたとおりです。一応、こちらも近日中に概要を改めて研究室のウェブサイトに掲載する予定です。


6月13日(金)
5限 国際協力実践論I(9回目)…前回講師としてきて下さったJICAの方がお話ししてくださった市民参加協力事業について復習を行いました。NGO地方自治体、また大学などとのパートナーシップとして行われる連携・協働事業についてまとめを行い、その位置づけや意味合いなどについて確認しました。次回は外部講師としてNGOのスタッフの方にお越し頂く予定です。ODAとの協働をNGOがどのように行っているのか?についてお話ししていただく予定です。

6限 専門演習[3年ゼミ](9回目)…続けてテキストの輪読をしています。今回は、債務危機が起こったしくみについての章に関する発表とディスカッションでした。一般的に「貸す援助」によって発生した債務(=借金)は、途上国に人たちが怠惰であるがゆえに生み出されたモノであり、その「被害者」である先進国の我々は「借りた以上返すべきだ」という姿勢で考えがちです。しかし、その債務がただ途上国の責任だけではなく、先進国による援助のあり方そのものに不平等があり、また経済的なしくみのなかで生み出された部分も非常に大きいということを改めて(というのは既に国際協力論で学んでいるはずなので…笑)考えることができたかと思います。物事はいろいろな角度から見る必要があります。この本を通じてそうした多角的なモノの考え方も学べればいいなと思います。

 来週はいくつかの講義で授業内レポートがあります。皆さんそれぞれしっかり準備をしてきて下さい。講義を聞いていればかける内容にしますのでご心配なく。それでは、また授業で。