バンドエイドが生み出した社会〜BS1『空前のチャリティーバンドはこうして結成された』

 ここのところBS世界のドキュメンタリーばかり見ている感じですが、今日はこの番組の放送がありました。

空前のチャリティーバンドはこうして結成された
 第3世界への支援のためのライブ・エイドWe are the World などのチャリテイーコンサートが大々的に企画されるきっかけとなったのは今から約20年前、1984年にイギリスで突発的に実施されたバンド・エイドプロジェクトである。
 BBCのリポートでエチオピアに大規模飢餓が発生していると知ったあるロックスターがこのプロジェクトを思いついたのがそもそもの始まりだ。
 発起人であるアイルランド出身のロック歌手ボブ・ゲルドフへのロングインタビューを軸に、プロジェクトを立ち上げようと思った理由、レコード売り上げ金を全てエチオピアへの寄付金とするための難問をくぐりぬけていったプロセスを当時の記録映像を使って描く。このプロジェクトへの参加がきっかけで、第3世界への援助活動に目覚めることにつながったボノなどが当時の熱気と意義を思い出深く語る。1ヶ月でレコードは250万枚という前代未聞の枚数を売り上げた。
原題: Band Aid Story 制作: Class Films Limited(イギリス) 2004年

 バンド・エイド・ストーリーと題されたこの番組は、エチオピア飢饉を前にして英国のアーティストたちが「できることをしよう」とボブ・ゲルドフを中心に立ち上がり、1曲のクリスマスソングをレコード化し、それを基金としてエチオピア支援を行った軌跡を描いています。この経過に関しては、ライブエイドに関するDVDに「Food and Trucks and Rock 'N' Roll(食糧とトラックとロックンロール)」というドキュメンタリーが入っていて、さらに詳しい当時の様子が英国社会のキャンペーンの状況と合わせて紹介されてもいます。ただそれとの違いは、今回の番組がアーティストたちが現在の視点から当時の様子を語るシーンが入っていることですね。U2のボノが歌いたくない、そして今も気に入らないフレーズを歌っていたという話はへえ〜と思いましたね。

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 カルチャークラブのボーイ・ジョージがいかにふくよかになったか!とか、アーティスト視線での番組構成はアフリカを考えると云うよりもセレブリティの社会貢献活動というのがどういうものか?ということと、それをいかにうまく使うか?という部分に関しては、見ているだけでも面白いですし、日本ではまだまだそうした部分が十分にできない社会においてどのように"発展"させるか?と言うことを考えるには興味深い内容でした。スパンダー・バレエのトニー・ハドリーのコメントなどはまさに今の日本のセレブリティにはよく聴いて欲しい感じです。

 ただ今回の番組の一番の肝は最後の最後のU2のボノのコメントだったと思います。彼らはこんな風に当時を振り返り、発言していました。

 正確にはわからないけど、ライブ・エイドで集めた資金は2億5000万ポンドぐらいだろう。大変な額に驚いたよ。皆、少しは貢献できたと誇りに思っていたんだよ。でも現実は厳しいものだった。アフリカは負債の利息として寄付金と同じ額を毎月支払っていると知った。

 負債というのは、先進国によって行われた金貸し援助(ODA)によって生まれた債務のことを意味しています。ボブも「僕らのバンドエイドは所詮一時しのぎの救済しかできなかった」と話しています。実際、ボブやボノのその後の社会との関わりを見ると彼らがバンド・エイドライブ・エイドを経て生まれが考えや思いが、債務帳消しのジュビリー2000キャンペーンやアフリカの援助やエイズ問題に取り組む姿勢にも現れています。そして、彼らだけではなくそうしたキャンペーンに英国の多くのアーティストたちが関わっているという現状があります。これは間違いなく、これらの80年代の活動を受けて地盤が固まり大きく根付いた結果だと思います。その意味で、この英国での活動が生み出したものはあまりにも大きく、そして意味があるものだったのだと改めて考えました。

 文脈はまったく変わりますが、当時からボノのボーカルというのは凄く存在感があり、とても魅力的なのだと改めて思った番組でもありました。年はとってるけど、ボノはかっこいいな。

ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?

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