ボランティアのあり方〜BS1「アフリカ支援は甘くない」第3回

 昨日に続いて「BS世界のドキュメンタリー」のシリーズ・アフリカ、『アフリカ支援は甘くない〜起業家8人の挑戦〜』。今日で第3回目の放送になりました。まずはいつも通り下記に今回の内容を紹介します。

『アフリカ支援は甘くない〜起業家8人の挑戦』第3回「時間との戦い」
 イギリスの起業家8人がウガンダの村に3週間滞在し、村おこしのプロジェクトに挑んだ模様を送る3回目。ウガンダ到着から13日がたったが、雨の影響などもあり計画はスケジュール通りに進まない。プロジェクトを立ち上げたチャリティー団体のウガンダ事務所代表は、アフリカでのビジネスはいかに辛抱強くやれるかが鍵だと話す。しかし、起業家たちは帰国までにプロジェクトが完成しない可能性に不安を隠せない。そんな中でゲストハウス建設のプロジェクトは一応順調に進み、村の教会で委員を務める男性がマネジャーに決まった。一方、大幅に遅れたがジャガイモ貯蔵庫が完成。次の仕事として起業家たちは、村人たちに「ビジネスマインド」を教える。交渉のテクニックを教えられた村人たちは、1時間にも及ぶ交渉の末、希望の価格でジャガイモを売ることに成功する。
原題: The Millionaires’ Mission 制作: channel4(イギリス) 2007年

 おおよそ上に書かれているとおりの話が進むのですが、国際協力(国際支援と言い換えてもいいかもしれません)という側面からはうまくいったとはお世辞にもいえないプロジェクトについて紹介されていません。それは、住宅建設会社の社長であるスティーブ・モーガンがこだわっていた、水のプロジェクトです。第2回の放送ではまったく触れられていなかったスティーブのプロジェクトは当初の形から少し変わって、学校に雨水を利用した水供給プロジェクトを行うことにしたようです。子どもたちが授業の合間に往復2時間をかけて学校で使用する水を汲みに行かなければならないという現状を憂いたスティーブは、学校の屋根や樋を利用して雨水を溜めるための巨大なタンクを設置することにします。もちろん、屋根の樋もそのままでは十分に使えず、その修繕・追加から、樋からの水をタンクに溜めるためのパイプの埋設・設置を行うというプロジェクトです。巨大なタンクを村まで運び込み、それをトラックから降ろしたところでスティーブはプロジェクトの成功を確信し、自らの一足早い帰国を考えます。

 スティーブは自分一人だけでこのプロジェクトを行いました。他のメンバー7人の誰からも同意を得ることができず、しかし何とか実現したい彼はプロジェクトの遂行を一人で決め、実行してきました。そして完成を待たずに成功を確信したところで現地をあとにするという決断を下します。仲間たちはプロジェクトの完遂までいるべきだと説得しますが、彼は「もう大丈夫だ。役割は終わった」と帰国します。他のメンバーもそれを見て憤りを感じながらも、「帰るという人を止められない」と説得を諦めます。しかし、スティーブの帰国後、彼のプロジェクトを嫌々ながらも放っておくことができないシャヒード・アジムとトニー・キャラハンは翌日現地に行ってその不完全さに口をあんぐりと開けてしまいます。最終的にそのプロジェクトは形を為し、子どもたちの水汲みの仕事からの解き放つことになるのですが、彼の離脱に関してはメンバーも納得していないようです。

 ここでふと考えるのは、NPONGOによくあるボランティアの活動への関わり方です。責任のあり方と考えても良いかもしれません。いわゆるボランティアは「自発的に、無償で、公益性を持った」活動を示します。日本ではなぜか「無償」というところに重きを置く傾向にあります。しかも、ここでの「無償」を対価を一切もらわないという理解のされ方をします。しかし、ここでいう「無償性」の意味合いはそうではない。これは、「経済的な報酬を目的としない」ものと捉えるべきでしょう。簡単に言えば、お金のためにボランティアをするということはあり得ないが、まったくの無償である必要はないということです。

 さらにボランティアは一時的な手伝いであり、仕事であるわけではないから離脱するのも自由であると言い切ることが難しいということがあります。スティーブは云うまでもなく誰かに命令されてこの企画に参加したわけではなく、自発的に参加しているでしょう。しかし、一端、村人と関係・繋がりを持ち共にプロジェクトを進めるなかで、彼が自発的にそこから離れることを「仕方ない」と承認してもよいか?というとそうではないはずです。もちろん、村人以外にも同じ企画でやってきた他の7人の起業家たちとの関係性・繋がりにおいてもそうです。ただ、彼の自発性は最大限尊重されるべきであり、村人及び起業家たちとの話し合いの結果、納得して離れることはあり得ます。しかし、一度こうした繋がりを持った以上、彼が一人で決めて離脱することはやはり大きな問題がある。メンバーの一人が「帰るという人を止められない」というのは確かにそうでしょうが、それでも彼のここまでの関わりを如何に考えまた清算していくかというのは大切なことでしょう。

 後日談として、実はスティーブは帰る前に首都により政府首脳との話し合いの場を持ち、同様の、けれどもっと大規模な村人3500人及び5つの学校を対象とした水供給プロジェクトを行うことを決めて帰国していました。彼はまったく考えていなかったわけではない。彼ができることを考える中で、今度は独自にウガンダの水供給に関わっていく方法を探して帰国していたのです。しかし、同じようにボランティアによって今回の企画に関わったメンバーにそのことを伝えることは必要だったはずです。そこにNGOのボランティアとしての責任があります。

 ついでに、彼が政府首脳と話し合い決めた大規模水供給プロジェクトは確かに政治家や役人たちを喜ばせたでしょう。また今回と同様にきっと水を得られる村人たちは喜ぶことでしょう。しかし問題は一時的な喜びはあれど、プロジェクトが実際にうまくいくのか?またそれを誰が管理・修繕し、将来的なものとして残っていくのか?ということは結局分からないままであり、政府などがODAなどを通してよく行う、実際にプロジェクトに関係する人たちの姿が彼のプロジェクトの中には見えにくいのも事実です。ただし、彼のこのプロジェクトについては多くが語られていない以上、片に憶測でものをいうことはできませんが。

 そのほかのジャガイモの貯蔵庫の建設事業とジャガイモの売買というビジネス手法を伝えること、そして学校の敷地内に作る宿泊施設(ホテル/ゲストハウス)のプロジェクトは着々と現地の人を巻き込みながら形になっていきます。上の概要で紹介されているとおりです。書かれてないことでは、ドミニク・マクベイが宿泊地にやってくる観光客が学校で英語を教える傍ら、村にある自然という資源を用いたグリーン・ツーリズム的なレクレーションとしてマウンテンゴリラを見る1泊2日のツアーを形にしていったという話もありました。マウンテンゴリラはアフリカ3ヵ国にしか生存が確認されておらず、ウガンダはその1国であり、村の近くの森の中で目にすることができるという大切な「資源」でした。またホテルのマネージャーを捜すときに、今回のリーダー的存在になっているセブ・ビショップとディアドレ・バウンズがラジオ放送でその告知をしたシーンや、マネージャーになりたいとやってきた人たちを面接するシーンは、起業家的に新しいことを始めるワクワク感が満ちていました。(セブはいい男ですしねぇ。)

 さて明日は最終回。ジャガイモの貯蔵庫と協同組合を通じたビジネスのあり方、そして一番のプロジェクトである宿泊施設と付随する学校での英語を教えるボランティア及びマウンテンゴリラを見学するグリーン・ツーリズム的レクレーションは一体どうなるのでしょうか。最終日までの内容と、3週間の企画の終わった3ヶ月後に村を再訪するメンバーの様子が放送されるようです。楽しみにしています!そしてご覧になった方でいろいろと考えたことなどがある方は是非いろいろと意見交換しましょう!