協力関係=信頼関係〜BS1「アフリカ支援は甘くない」第2回

 昨日に続いて2話目。今回の内容はこんな感じ。

「アフリカ支援は甘くない〜起業家8人の挑戦〜」第2回「村人の協力」
イギリスの起業家8人がウガンダの村に3週間滞在し、村おこしに挑んだプロジェクトの過程を伝えるシリーズの2回目。村に来て8日目、参加者たちは複数のプロジェクトを進行させようと必死になる。その一つ、ジャガイモ農家の収益を上げるプロジェクト。イモの貯蔵庫を造り、市場での値段が高くなる時期に出荷するというアイデアだ。建設作業に参加した人だけが貯蔵庫を使えることにしたが、村人は予定の時間に現れない。もう一つのプロジェクトは、村人が安心して子供を産めるよう村の医療センターに電気を敷くこと。だが、ここでも作業当日に村人たちは現れなかった。
原題: The Millionaires’ Mission 制作: channel4(イギリス) 2007年

ウガンダの村を活性化させるための事業を生み出そうと8人の起業家たちがNGOのプロジェクトのひとつとして3週間現地に派遣されて数日。2話目の今回は上記の通り、実際にいくつかの事業に着手し、そこに村人たちの協力を得ようと試行錯誤します。昨日のエントリーにも書いた、小学校のなかに宿泊施設(「ホテル・ウガンダ」と呼んでる人もいたが)を作るプロジェクトに加えて、イモの貯蔵庫と医療センターへの電気敷設というプロジェクトが新たにあがってきた。(昨日、スティーブがこだわっていた水のプロジェクトは今回取り上げず。)

 タイトルにもあるように今回のテーマは「村人の協力」。イモの貯蔵庫は、せっかくイモを栽培し一部を販売に回しても、皆が同じ時期にイモの販売を使用と試みるためにみんなが売れず、また逆にイモが欲しいと思っている人がいるときには既に商品がないという状況にあり、また売買のための市場も存在しないために、農家が利益を上げることができる仕組みがないと起業家たちは考え、イモの貯蔵庫を造り、そこに補完し、市場的な役割を担うものとしてプロジェクトを立ち上げる。また医療センターへの電気敷設プロジェクトは、病院に電気がなく、出産のようにいつ何時起こるか分からない出来事に対応する仕組みがなく、そのために出産という本来なら命を生み出すできごとが結果的に悲劇をもたらしている現実を鑑みて、行おうと計画された者でした。

 しかし、どれも思うとおりにいかない結果になります。それは村人が起業家らのプロジェクトにたいして協力的でないからです…という見方はもちろん起業家たちの視点であり、彼らが「実現可能なプロジェクトでありビジネスモデル」だと期待したものが村人たちにとってはそうではなかったという結果をもたらしたわけです。

 「ビジネスは自分が率先してやること」だと村人らの姿勢を批判し、また「君たちのためにやっているんだ」といくら起業家たちが力説しようとも、村人たちの心にそれは届いていかないという現実。村人たちは「気まぐれで根気がなく」、「教育を受けていないから僕らのやろうとしていることの意味が分からない」と口々に言う起業家たちの思いは村人たちと交わるところがありません。

 そのなかで、イモの貯蔵庫の建設で建物を高価で耐久性のある煉瓦で作りたいという村人と、将来的なことを考えて、土や木など村で調達可能なもので作りたいという起業家たちの間で対立していたものが動き始めます。それはセブの「僕たちは物をあげるために来たんじゃない。みんなの将来を作りに来たんだ」という言葉を受けて翌日村人たちが「一緒にやろう」と集まってきたからです。

 うまくいかない電気の敷設プロジェクトは村人が協力しない現状にリーダー的役割を担ってきたシャヒードが「教育を受けていないから」と言葉を繰り返す反面、「このままプロジェクトを進めたらすべてがめちゃくちゃになるだろう」とプロジェクトの中止を考え始めます(ここのところはさすがにこうしたプロジェクトに参加しようと思うだけの企業家だと思います)。そして翌日、今回の企画をしたNGOのスタッフであるクワランバに相談に行くのですが、そのときに彼女はこのように彼に伝えます。

 こういう地域に来るときには、物を持ってきたから感謝しろという態度は絶対にダメ。代わりにこう言わないと。「あなた方はこんな目標を持っているんですね。そこに至るまでの道のりを一緒に歩きましょう。お互いにどんな形で協力できるのか、じっくり話し合いましょう」ってね。この対話がきちんとできていれば腹の探り合いはなくなる。でもそうした協力関係をうまく築けなければ、「あの人たちは別世界の人間だ」とか「きっと何かくれるんだろう」と考えてしまうの。人間関係は全部ギブ&テイクだから、与えるばかりで何も帰ってこないなんてことは絶対にないわ。

 イモの貯蔵庫建設プロジェクトが前に進み始めたきっかけはセブの「一緒にやりたい」という思いが伝わったからでしょう。日本のODAが多くの問題を抱えているのは、まさにこの「一緒に協力していく」という現地の人たちとの関係性が作れていないからです。ODAを拠出すること、支援することは、ただ感謝されるものだと妄信し、一方でODAをそうした「協力」という関係性の構築ではない外交政策として行おうとしているからでしょう。資金や技術を提供する供与側もまた「責任」が多分にあります。それは、シャヒードガ「すべてがめちゃくちゃになる」と言っているまさにその通り、人々の今後の生活に大きな影響を与えることになるからです。そうした事柄をわかりやすく改めて考えるきっかけになる番組ですね。明日の第3話も楽しみです。

 もはや今の時代に起業家/企業家たちが国際協力に関わってくることを、ただ毛嫌いするひとはいないでしょうし(もちろん問題もたくさんありますが)、またこうした番組のためにウガンダのあの村が受けている影響を考えることも必要であるかもしれません。しかし、それはそれとして考えるにしても、この番組はうちの大学の学生たちにも見てもらいたいものです。全部で4時間近くあるから授業では難しそうですが…(笑)。

ジャガイモの世界史―歴史を動かした「貧者のパン」 (中公新書)

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