JVCカンボジアの農業・農村開発事業についての講演会

JVC九州ネットワークというNGOの学習会に行ってきました。NGO論の授業のなかで紹介したJVCカンボジアの山崎さんが1週間あまり一時帰国をされており、カンボジア国シェムリアップ県の35村で今年4月にスタートした農業・農村開発プロジェクトである「生態系に配慮した農業による生計改善プロジェクト」についての話を伺いました。


バイヨン (Bayon) 遺跡@アンコール・トム(シェムリアップ


国民の3人に1人が貧困ライン以下で生活をしているカンボジア。とりわけ都市と農村格差というのは深刻です。さらには都市、農村ともにそれぞれ内部にもまた貧富の格差を抱えています。「南北格差はもう古い」という話を援助関係者からされたという学生の話に、確かにこうした国内格差や南南格差の問題など確かにとは頷くところもあります(しかし、南北格差は古いと「あえて」言われたのでしょうが、考え込むところはあります。援助関係者ならなおさら…とこれはおいておきましょう)。JVCカンボジアは今年春までの約10年間、プノンペン近郊の農村での農業・農村開発プロジェクトを行い、ひとつの区切りをつけて(しかしウェブサイトを見ればわかるようにまだ大きな繋がりは残ったままです)の新しいプロジェクトのスタートです。

事前の調査を半年前から行い始まったこのプロジェクトはひとまず下記のような3年間の計画が現時点で立てられているそうです。

  • 1年目「食糧状況の向上と生計の改善」
  • 2年目「相互扶助による生計改善の取り組み」
  • 3年目「地域の自然や文化を生かした独自の取り組み」

このプログラムは、事前の調査の結果、約4割が男女問わずプノンペンシェムリアップへと出稼ぎに行き、約6割が毎年収入よりも支出の多い借金生活を送っている状態にあることや、富裕層と貧困層の収支状況を比較してみると、貧困層の方が医療費を多額に支出するという栄養状況や衛生設備の悪さに起因する問題が明らかになったことから生まれたものでした。つまり、農業生産性を上げることを中心に、そうした改善を行っていくことを目的としました。

始まったばかりで、プロジェクトの具体的な成果はこれから…ですが、改めてJVCの開発協力へのスタンスが非常に大切なもので、一般市民の方はもちろんですが、多くのNGO関係者、とりわけ現場の事情に必ずしも精通しているとは言えない(僕も含めた)福岡のNGO関係者の人たちにももっともっと山崎さんのお話を聞いて頂きたいなぁと思います。

興味深かったものを1点。JVCカンボジアでは支援をするにあたって、まず最初に「住民説明会」を行うのですが、たいてい、ここに参加した村の人々はある部分でちょっとがっかりして帰るそうです。それはなぜかというと……、JVCが「何もくれないから」なんだそうです。支援をする/援助をするということが引き起こす「依存性」の問題を改めて考えます。恐らく、村の人たちにとって見れば「NGOがやってくる=何かくれる」という視点なんでしょうね。しかしだからといってその後、農民の方がJVCに関わらないか?といえば、そういうこともなく、少しずつ農業研修などにも参加し、村の人たち自ら「発展」するための取り組みに真剣に関わっているそうです。

カンボジアの村の話を久しぶりに聞きました。懐かしいなぁと思いながら、「また行きたい!」という気持ちがむくむくわいてきます。山崎さんには「何で来ないんですか?さてはカンボジア嫌いになったんでしょう?」なんて言われてしまいましたが、ほんの1年ちょっといってないだけですよ!(笑)近いうちにまた関心のある方と一緒にでも行けるといいなぁなんて思いつつ、再会の約束をし、別れたのでした。

そういえば、NGO論の授業を受けてくださっている学生さんも参加してくれてましたね。ありがとう。面白かったかなぁ。

追伸:カンボジアでのJVCの活動などについて以下の本など参考になります…のでご紹介です。

カンボジア最前線 (岩波新書)

カンボジア最前線 (岩波新書)

NGOの選択―グローバリゼーションと対テロ戦争の時代に

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