地球温暖化問題取扱説明書〜田中優『地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか』

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「お、坂本龍一だ」と手に取ったその本には見慣れた名前が……優さんだ。
もう、師匠(←ずっと勝手に呼んでる)ったらいつの間にやら新書を出してるんだからなぁ。
…なんて悩むことなく(正確には「扶桑社」の文字に少しは悩みつつ)ゲット。
読み始めたら、いつもの優さんの姿が目の前に現れてくるように一気に読み終えた(実際、
ピースボートでの講演を起こしたものであるようだ)。前に聞いた話も新しい情報も
たくさん盛り込まれていて、「さすが」の一言。下↓のamazonのレビューでは、
「日本のゴア」とか書かれてますよ、優さん!

地球温暖化/人類滅亡のシナリオは回避できるか
田中 優
扶桑社 (2007/05/30)
売り上げランキング: 10112
おすすめ度の平均: 5.0
5 日本のゴアが環境問題の誤解をときはなつ

先日のドイツでのG8あたりから、安倍が「温暖化対策に取り組もう!」とか偉そうに
言っていて、クールビズだの、かりゆしウェアだの、経費1億円の安倍夫妻一面広告だの、
博報堂27億円だのと「環境派」もどきの行動が報じられているけれど、優さんの本を
とりあえず読んでなんかしなさい!と一喝したいものです。

「ここ10年が勝負」という温暖化対策。環境省などが中心となって「100万人のキャンドル
ナイト」を行ったり、私たちの生活スタイルの見直しを声高に叫び、それによって解決できる
のだといいます。けれど優さんは「それはウソだ」といいます。だって、家庭は二酸化炭素
排出量の13%しか出していないのだから、と。実際、排出総量の半分を出しているのは日本の
わずか167の「工場」だというのです。そして政府が許す、こうした企業の二酸化炭素排出量の
非開示の問題も依然として存在していると書きます。同時に「オール電化」で環境に優しく!
という電力会社のウソと構造的問題についてもきちんと説明してくれます。
とりあえず、森高千里は「きれいライフ、オール電化」と歌うのをやめましょう。
あと電気消してみんなで集まるよりも、外出中に待機電力をオフにするとか、省エネ電化製品
を新調する方がいいみたいですよ。

最後には、それでも私たちの生活のなかで帰られるところを「楽しく」「トクをする」ように
変えていく方法でひとりひとり貢献することもできるんだよという具体的な提案は、
「我慢する」「つらい」温暖化対策自体が問題なんだよなぁと逆に思い返します。
例えばこんな件。

従来の官僚、政治家、電力会社の人々が考えていたロジックが、いかに間違っていたかがわかります。「電気が必要」しかも「たくさんの電気」が必要なのだから、「そのためには大規模な発電所が必要」で、「電気は貯められない」以上は、どうしても「巨大な発電所が必要」になる。するといやでも、「戦争とか地球温暖化とか、原子力の危険性は避けられない」、「それは必要悪」なんだ、「やむをえない」というのが現在のロジックの主流です。

 これはまったく間違っています。なぜなら我々は「電気が必要」ではないんです。我々が必要としているのは、「明るさ、ぬくもり、便利さ」でしかないんですね。もし省エネ製品を使えば、ずっと少ないエネルギーで同じ「明るさ、ぬくもり、便利さ」を得られます。しかも少量の電気であれば自然エネルギーで十分まかなえます。…以下略(pp.160-161)

また優さんならでは!なのが、第三章の「石油と戦争と温暖化」ですね。
このあたりは、『戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方
―エコとピースのオルタナティブ
』に詳しいので、是非こちらも併せて読んでください。

戦争をやめさせ環境破壊をくいとめる新しい社会のつくり方―エコとピースのオルタナティブ
田中 優
合同出版 (2005/07)
売り上げランキング: 8241
おすすめ度の平均: 5.0
5 たくさんの人に読んでほしい
4 heiwa
5 著者の真剣な態度に感動しました

あっという間に読めてためになるこの一冊。是非手にとってくださいね。
あ、あと、どこかの政党が優さんを環境大臣にするとか公約にしませんかね?
絶対投票しますけどねぇ(…優さんはイヤかもしれないですけど…笑)。
ただ最後までしっくり来ないのはやはり「扶桑社』なんですが、出版してくれた
ということで我慢します(笑)。