東へ西へ革命家は進む〜奥田英朗『サウス・バウンド』〜

 明日夕方以降、少し天気が崩れるようですが、ここ数日は暖かくいい天気が福岡では続いています。春のいいところが満載されている感じがして、ついその向こうの夏をイメージしちゃいますね。・・・ということで、上の画像はスイカ。ちょっと前、3月半ばくらいから八百屋さんやスーパーに並び始めたスイカ。うーん、早く値段がこなれてくればいいなぁ(笑)。

 ところでスーパーに並んでいたこのスイカにも最近流行のQRコードがついていました。写真でわかります?これを店頭でパチッと撮ってみてみると、JA鹿本の園芸部会のページが表示されて、スイカのマメ知識や選果場の様子などが表示されます。ちなみにこれを見ると、どうもこのスイカ、「夢大地かもと」春夏スイカの出荷は2月から始まっているようです。そんなに早くからスイカって出てるんですねぇ。

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 さて、GWが近づいてきました・・・と取り立てて用はないんですが、せっかく仕事もお休みになることだし、ドライブか何かにでも行こうかなぁとか思いつつ、とはいえ、ちゃんと研究せーよ!と自分に言い聞かせる日々。これまで「つん読」状態だった本も少しずつ高さを失い始めていることもあるし、さらにペースアップでいかないとねぇ。

 そういえば最近、映画化もされた『イン・ザ・プール』や第131回直木賞をとった『空中プランコ』を書いた、奥田英朗さんの『サウス・バウンド』を読みました。

 小学生の主人公・二郎の父親は元過激派の革命家で、今はアナーキスト。左翼運動の最前線で身体を張って活動をしてきた人間で、今は喫茶店を営む母親も左翼運動のマドンナ的存在だったという設定。東京から沖縄へと続く二郎の目から見た冒険譚。大人たちの都合に巻き込まれつつ、小学生ならではの子どもライフも合わせて二郎の視点で語られるこの本は一種の少年成長物語。駆け落ちの母親の実家が金持ちで、それに後ろ髪を引かれつつも、どこか苦手な父親にも惹かれてしまうのですが、さすが奥田英朗。しっかりと面白おかしく500ページを越える物語を読ませます。

 国家権力に立ち向かう父親は東京では(それなりに)おとなしくしていたものの、西表島に足を運び居を構えた先がリゾート建設のために自然と伝統が破壊されようとしているまさにその場所。父親を利用しようとする市民団体と、それにそっぽを向いて、けれど一人で(家族+αで)資本主義的権力に立ち向かうなかで、いつの間にやら二郎も父親のかっこよさに気づく。

 とはいえ、こうした権力に抗することを単に肯定しているわけではなく、この父親やマスコミまで利用して自らの、抗すること自体を目的化してしまい、自らの正当性のみに執着する左翼的運動を暗に批判しているような内容がそのウラに隠れています。そして表のコンセプトとしての二郎を主人公とした子どもたちの夢、将来への希望に満たされた内容といいシンクロ具合です。

 権力に従順な(というか無関心な)人たちはもちろん、革命だとか反権力だとかそんな言葉に引かれた人にもガツンと何かしらの思いを残すこの小説は、それなりに考えさせられるようなところがあると思います。ちなみに、『イン・ザ・プール』や『空中プランコ』の面白さにはまった人はもちろん物語の面白さは継続中。最近発売された、『町長選挙』(なんてタイトルなんだろう・・・笑)も読まないとなぁ。あ、そういえば相棒が貸してくれてる『ララピポ』もまだ読んでないや!ちなみにこの『サウス・バウンド』は2006年本屋大賞の第2位です。