「あなた方も我々先住民を誇りに思って欲しい」

 ホリエモン証券取引法違反で逮捕されたとマスコミは喧しく報じている。フジテレビの「ここぞ!」とばかりの辛辣な報道は見てて笑いたくなるけれど、何よりもこの騒動が一方で「節度ある、責任ある資本主義」的な価値観を強め、その背後にある問題をさらに大きな布で覆い隠してしまう空気があるという感じがする。先日書いたLOHASだって見方を変えればこの「節度ある、責任ある資本主義」というものに連なる上っ面の価値観であるともいえるけれど、

 地球の裏側、南米ボリビアで22日、新しい大統領が就任式を行った。「社会主義運動」という日本では好まれにくいだろう政党から生まれたエボ・モラレス大統領(写真)は、「ブッシュはテロリスト」などという発言で就任前から騒がせたけれど、アメリカ大陸12ヵ国の先住民代表ら1万人が集まった世界遺産「ティワナク遺跡」での21日の儀式でこう発言している。(毎日新聞1/23朝刊)

「我々はあなた方、ボリビアの中間層や知識人を誇りに思う。だから、あなた方も我々先住民を誇りに思って欲しい」

 さらに、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラ、先住民の英雄トゥパク・カタリの名をあげた後、こう続ける

「彼らの夢を実現するため、先進国が貧困や惨めさを放置するような世界を変えていこう」

 もちろん、モラレス大統領の思想や社会観には同意しかねる部分もよくよく見ればあるかもしれない。けれども、こうした発言をハッキリとすることができ、国民に訴えかける様は羨ましいとすら思う。この国の政治家たちを見ていると特に。

 先住民が6割を占めるボリビアではこれまで彼らは虐げられていた。だからといって、彼らが国の中枢を握ったとしても、彼らが行うのは富裕層への弾圧ではなく、同じ社会でどちらも幸福に生きていくための方法だ。実際、「「大土地所有は違憲。個人が20ヘクタールも土地を持つことは許されない」と、今後、富裕層から土地を接収する考えを示唆」しているけれども(毎日新聞)、それを「弾圧」と捉えられるかどうかは、彼らの手腕に大きく関わる。ただ、金持ちが金持ちになり続け、貧しい人が貧しくあり続けるしかない社会はやはり間違っていることは、今の日本が示している。今後もボリビア、そしてモラレス大統領の発言には注視したい。